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コラム

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【基礎から解説】障害者就労支援とは何か?企業に求められる役割と雇用のポイント

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障がい者就労支援とは、障がいのある方が自分らしく働くために、職業訓練や就職活動、職場定着を包括的にサポートする制度やサービスの総称です。障害者雇用促進法にもとづく法定雇用率の引き上げなどを背景に、多くの企業で障がい者雇用の推進が急務となっていますが、「具体的な支援制度の仕組みがわからない」「自社でどのように受け入れ体制を整えればよいのか」とお悩みの人事・採用担当者の方も少なくありません。

本記事では、障がい者就労支援の基本的な概念や主なサービスの種類、企業が活用するメリット、雇用のポイントについてわかりやすく解説します。さらに、従来のオフィス業務にとらわれない新しい雇用の形として注目される「農園型の障がい者雇用」の活用法についてもご紹介します。

※本記事では、法令・制度の正式名称は「障害」、それ以外の一般的な表現は「障がい」と表記しています。

障がい者就労支援とは?制度の基本概念と目的

障がい者就労支援とは、障がいのある方が個々の特性や希望に応じた職業生活を営めるよう、就労に必要なトレーニングや職場探しのサポート、就職後の職場定着までを総合的に支援する制度や取り組みの総称です。

企業における障がい者就労支援の役割は、単に法的義務を果たして労働力を受け入れることにとどまりません。労働力不足が深刻化するなかで、多様なバックグラウンドを持つ人材が力を発揮できる職場環境を構築し、持続可能な社会の形成に寄与するという側面も持っています。

障がい者就労支援の定義と社会的役割

障がい者就労支援の根幹には、障がいのある方が社会の一員として自立し、能力を発揮できる環境を整えるという目的があります。従来の福祉施策から「働くことによる社会参加」へと軸足が移るなかで、行政、専門支援機関、そして企業の三者が連携しながら就業機会を拡大することが求められています。

企業にとって障がい者就労支援に関わることは、社会的責任(CSR)の履行にとどまらず、社内の業務プロセスの再設計や、多様な人材を受け入れるダイバーシティ&インクルージョンの推進につながる機会にもなります。

障害者雇用促進法と法定雇用率引き上げの背景

近年、民間企業における障がい者雇用の重要性は急速に高まっています。その背景にあるのが、障害者雇用促進法にもとづく法定雇用率の段階的な引き上げです。

法定雇用率は、2023年度の2.3%から2024年4月に2.5%へ引き上げられ、さらに2026年7月1日からは2.7%となりました。あわせて雇用義務の対象となる企業の範囲も、常用労働者40.0人以上から37.5人以上へ拡大しています。これにより、これまで対象外だった中小企業も新たに義務の対象となっているため、まずは自社の常用労働者数と法定雇用障害者数を正確に把握することが出発点となります。

また、2025年4月には除外率が各業種で一律10ポイント引き下げられており、除外率設定業種に該当する企業では、雇用率の引き上げと重なって必要な雇用人数が一度に増えるケースもあります。

労働力人口の減少に直面している日本において、多様な人材の確保は中小企業を含めた共通の課題です。国全体として共生社会の実現を推進する政策が進められており、民間企業には法令遵守はもちろん、企業の社会的責任としての積極的な対応が求められています。

参考:厚生労働省「障害者雇用促進法の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/03.html

参考:厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf

企業が知っておくべき障がい者就労支援サービスの種類

障がい者就労支援サービスは、利用される方の障がいの特性や目指すキャリアパスに応じて、多様な形態で提供されています。障がい者雇用を推進する企業にとって、各サービスの仕組みと役割を正しく把握することは、自社の採用戦略や受け入れ体制を最適化するうえで重要です。本章では、代表的な支援制度の概要と活用法を読み解いていきます。

なお、ここで紹介する就労移行支援・就労継続支援・就労定着支援は、いずれも障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスです。企業が直接雇用する仕組みとは制度上の位置づけが異なる点を、あらかじめ押さえておきましょう。

就労移行支援:一般企業への就職を目指すトレーニング

一般企業への就職を目標とする方に対し、実務に必要なスキルや知識の習得をサポートするサービスです。利用期間は原則2年間で、PCスキルの向上やビジネスマナーの習得といった実践的な訓練に加え、書類作成や面接対策などの就職活動支援も行われます。

企業にとっては、就労移行支援事業所と連携することで、職場実習の受け入れを通じて入社前に相互理解を深められる点が大きな利点です。実際の業務に近い環境で適性を確認できるため、入社後のミスマッチを軽減しやすくなります。なお、求人の紹介まで受けられるかどうかは就労移行支援事業所ごとに異なります(職業紹介を行うには無料職業紹介事業の許可が必要です)。連携を検討する際は、実習受け入れや紹介の可否をあらかじめ確認しておきましょう。

就労継続支援A型・B型:障がいや体調に合わせた働く場の提供

ただちに一般企業で働くことが難しい方へ、生産活動の機会と就労の場を提供するのが就労継続支援です。

  • A型:就労継続支援A型事業所と雇用契約を締結して働く形態です。労働者として最低賃金が適用されます(最低賃金の減額の特例許可を受けている場合を除きます)。
  • B型:就労継続支援B型事業所と雇用契約を結ばず、体調や障がいの状況に合わせたペースで作業を行い、成果に応じた工賃を受け取ります。

近年は、これらの事業所で経験を積んだ後に一般就労へ移行する事例も多く見られます。

企業においては、業務の一部をこれらの事業所へ発注することで、間接的な就労支援と将来的な人材接点の確保を両立できます。ただし、事業所への発注は法定雇用率には算定されません。法定雇用率に算定させる場合は自社で直接雇用する必要があります。

就労定着支援・障害者就業・生活支援センター:雇用後のサポート体制

障がい者雇用における本当のゴールは、採用の成功ではなく、その後の「安定した職場定着」にあります。就業後に生じる業務上の課題や生活面の不安を解消するために機能するのが、次の二つの仕組みです。

  • 就労定着支援:障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスで、就労移行支援などを経て一般就労した方が対象です。支援員が本人・企業・関係機関の間に立って調整を行います。利用期間は1年ごとの更新で最長3年間です。
  • 障害者就業・生活支援センター(通称:なかぽつ):都道府県知事が指定する社会福祉法人等が運営する支援拠点で、期間の定めなく就業面と生活面の一体的な相談支援を受けられます。就労定着支援の利用期間が終了した後の受け皿にもなります。

いずれも、支援員が定期的に職場を訪問し、本人との対話を通じたケアや、企業担当者への合理的配慮に関する助言を行います。企業が単独で対応するのではなく、外部の専門機関と連携することで、より安定した定着支援体制を構築できます。

企業が障がい者就労支援を活用して雇用を推進するメリット

企業が就労支援サービスを活用して障がい者雇用に取り組むことは、法的義務の履行にとどまらず、組織のあり方に前向きな変化をもたらします。専門機関の伴走を得ながら受け入れ体制を構築することで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。本章では3つの観点から整理します。

1. 法定雇用率の達成と社会的信用・CSRの向上

第一に挙げられるのが、法定雇用率の達成と、それに連動した対外的な信頼性の獲得です。2026年7月の引き上げにより、民間企業に課される基準は一段と高くなっており、計画的な雇用戦略の策定が必要な状況です。一方で、自社単独のノウハウだけで採用から定着支援までを完結させることは容易ではありません。

外部の就労支援サービスと連携し、自社の社風に合った人材の確保と定着を両立させることで、安定した雇用率を維持しやすくなります。これはコンプライアンスを遵守する姿勢を示すことにもつながります。またESG経営への関心が高まるなかで、多様性を重視する姿勢はステークホルダーからの評価につながり、ブランド価値を高める経営戦略としての側面も持っています。

なお、雇用率の達成は目的ではなく結果です。2022年の障害者雇用促進法改正では「雇用の質の向上に向けた事業主の責務」が明確化されており、数値の充足だけでなく、雇用した方の能力開発やキャリア形成に取り組む姿勢が問われている点も押さえておきましょう。

2. 業務の整理・切り出しによる組織全体の生産性向上のきっかけ

障がいのある方が能力を発揮するためには、既存の業務フローを見直し、遂行しやすい形に業務を「切り出す」プロセスが欠かせません。一見すると手間のかかる作業ですが、実は組織全体の生産性を見直す好機にもなります。

タスクを細分化し、手順を構造化する過程では、これまで暗黙知になっていた業務や非効率な慣習が浮き彫りになります。障がいのある社員のために整備されたわかりやすいマニュアルや整理されたワークフローは、結果として他の従業員の作業効率向上やヒューマンエラーの抑制にも寄与します。

まずは自社内での業務切り出しに取り組み、そのうえで、事業特性や執務スペースの制約から社内での業務創出が難しい部分については外部の選択肢を検討する、という順序で考えるのが現実的です。切り出しの検討を経ずに外部化を選ぶと、社内に雇用のノウハウが蓄積されず、中長期的な課題が残りやすくなります。

3. 社内風土の改善とダイバーシティ&インクルージョンの推進

多様な特性を持つ人材がともに働く環境は、組織の文化を風通しの良いものへと変えていきます。障がいのある従業員を尊重し、必要な配慮を検討する過程を通じて、メンバー間でも互いの事情を認め合うコミュニケーションが育まれていくからです。

こうした相互理解にもとづく土壌づくりこそが、ダイバーシティ&インクルージョンを形骸化させないための鍵となります。多様な背景を持つ人々が心理的安全性を感じながら働ける組織は、柔軟なアイデアや創造性を生む基盤になります。結果として、従業員一人ひとりの帰属意識が高まり、組織全体のモチベーション向上や定着率の改善といった成果につながっていきます。

企業における障がい者受け入れ・定着化の重要ポイント

障がい者雇用を成功に導くためには、採用活動そのもの以上に、入社後の「定着」を見据えた受け入れ体制の構築が欠かせません。多様な人材がそれぞれの能力を発揮できる職場環境を整えることは、組織全体の成長にも直結します。ここでは、企業が押さえておくべき3つのポイントを解説します。

1. 適切な業務切り出しと職域の確保

障がいのある従業員が無理なく能力を発揮するためには、本人の特性や適性を正しく理解し、それに合わせて業務を切り出すことが第一歩です。既存の業務プロセスを細分化し、得意分野を活かせる業務を明確にすることで、やりがいを持って働ける職域を確保できます。

その結果、業務のミスマッチを防ぎ、モチベーションの維持や生産性の向上が期待できます。一方で、既存のオフィス環境や業務内容によっては、適切な業務を創出することが難しいケースも少なくありません。その場合も、まずは部門横断で切り出し可能な業務を洗い出し、そのうえで不足分を社外の働く場で補う、という組み合わせで検討するとよいでしょう。

2. 職場環境の整備(合理的配慮の提供)と社員への理解促進

障害者雇用促進法では、事業主は過重な負担にならない範囲で、障がいのある方の個別の事情に応じた「合理的配慮」を提供することが義務づけられています(2016年4月施行)。これには、段差の解消や休憩スペースの設置といった物理的な環境整備に加え、業務指示の出し方を工夫するなど運用面の配慮も含まれます。

配慮の内容は、本人との話し合いを通じて決めることが原則です。あわせて、受け入れる部署の従業員に対する理解促進も欠かせません。障がいの特性や必要な配慮について社内研修などを通じて共有し、周囲のサポート体制を整えることが求められます。一部の担当者だけでなく、組織全体で多様性を受け入れる風土を育てることが、長期的な定着率の向上に寄与します。

3. 支援機関や専門サービスとの継続的な連携

障がい者雇用のさまざまな課題に対して、企業が単独ですべて対応するのは負担が大きく、専門的な知見が不足する場合も多いものです。就労定着支援事業所や障害者就業・生活支援センターなどの外部機関と継続的に連携することで、従業員本人の体調変化や業務上の悩みに早期に対処できるようになります。

また、ハローワークや地域障害者職業センター(ジョブコーチ支援)、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の各種助成金も活用できます。外部のリソースを効果的に取り入れることは、持続可能な障がい者雇用を実現するうえで有効な選択肢です。

新しい雇用の形:農園を活用した障がい者雇用の特徴と留意点

障がい者雇用を推進する際、従来のオフィス環境における業務創出や受け入れ体制の整備に限界を感じている企業は少なくありません。こうした課題を解決する手段として近年注目されているのが、農園を活用した雇用の形です。本章では、具体的なサービスモデルを踏まえて、その特徴と導入時の留意点を解説します。

農園型の障がい者雇用支援サービス(はーとふる農園)の仕組み

農園型の障がい者雇用とは、企業が農園の一区画を利用し、障がいのある方を自社の従業員として直接雇用して、農園での業務に従事してもらう仕組みです。前章で紹介した就労移行支援や就労継続支援のような障害福祉サービスとは異なり、雇用契約は利用企業と本人との間で結ばれ、企業が雇用管理の責任を負います。

たとえば日建リース工業株式会社が運営するはーとふる農園では、施設・設備の提供に加え、募集活動の代行から採用時の手続きサポート、就業後の定着支援までを一貫して行う体制を整えています。採用前には1週間から2週間程度の就農体験実習を実施し、本人の希望や適性と作業内容の適合性を確認したうえで選考に進むため、入社後のギャップを抑えやすい設計になっています。

作業はビニールハウス内で行われるため天候に左右されにくく、種まきから栽培、収穫までの工程がマニュアル化されている点も特徴です。腰高の栽培ベッドを用いる高床式砂栽培を採用し、かん水や温度管理は自動化されているなど、身体的な負担を抑える工夫がなされています。現地には農業指導員と、介護福祉士・精神保健福祉士などの資格を持つ支援スタッフが常駐し、日々の体調管理や業務上の相談に対応します。

業務の切り出しが難しい企業に適している理由と、導入時に押さえるべき視点

オフィスワークが主体の企業や、機密保持の観点から分業が難しい組織では、「特性に合った定型業務が見つからない」「IT化によって社内の軽作業が減っている」といった悩みが生じやすくなります。農園型の雇用は、こうした職域の確保に課題を抱える企業にとって選択肢の一つとなります。自社拠点の外に働く場を確保できるため、既存の業務フローや執務環境に大きな負担をかけずに雇用基盤を構築できるからです。

また、自らの手で育てた作物が収穫という目に見える成果に結びつくプロセスは、やりがいや達成感につながりやすいという声もあります。植物や土に触れる作業が心理面の安定に寄与するとの指摘もありますが、感じ方には個人差があるため、本人の希望と適性を丁寧に確認することが前提です。収穫した野菜をレストランやスーパーマーケットに販売するほか、社内食堂で提供したり、福利厚生の一環として活用したりすることで、障がい者雇用への社内理解を深める取り組みにつなげている企業もあります。

一方で、農園型を含む「障がい者雇用ビジネス」については、雇用率の達成のみを目的とした利用への懸念が指摘されてきました。2022年の障害者雇用促進法改正時には、衆参両院の附帯決議で、単に雇用率の達成のみを目的として雇用主に代わって障がい者に職場や業務を提供するビジネスの利用について、事業主への周知・指導等の措置を検討することが求められています。厚生労働省では実態調査を継続し、事業者および利用企業に向けたガイドラインの策定に関する議論が進められています。

したがって、導入を検討する際は、次の点を自社の言葉で説明できる状態にしておくことが重要です。

  • 雇用率の充足だけでなく、本人のキャリア形成や能力開発にどう関与するのか
  • 雇用主として、面談・評価・処遇決定にどのように関与するのか
  • 農園での成果物を自社の事業や社内活動にどう位置づけるのか

外部のサービスを活用する場合も、雇用管理の責任は雇用主である自社にあります。この前提を共有できるパートナーを選ぶことが、持続的な雇用につながります。

まとめ

労働力不足という課題に直面する企業経営において、多様なバックグラウンドを持つ人材の受け入れは避けて通れないテーマです。障がい者就労支援の活用は、障がいのある方の自立を後押しする福祉的な側面にとどまらず、組織全体の生産性向上やダイバーシティ&インクルージョンの推進を支える経営課題の一つとして位置づけられています。

雇用を成功に導くうえで重要なのは、個々の特性を理解したうえでの適切な業務切り出しと、就労支援サービスの計画的な活用です。そして2026年7月の法定雇用率2.7%への引き上げを踏まえ、まずは自社の必要雇用人数を把握することから始めましょう。

自社内のみでの環境整備に限界を感じている場合は、はーとふる農園のような外部の専門リソースに目を向けることも有効な手段です。その際も、雇用主としての関与の在り方をあわせて設計することが、雇用の質を担保する鍵になります。専門機関とのパートナーシップを構築し、企業と働く個人がともに力を発揮できる環境づくりに向けて、一歩を踏み出してみてください。

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